ILSI Japan   特定非営利活動法人 国際生命科学研究機構
 

特定非営利活動法人 国際生命科学研究機構(ILSI Japan)は1981年に設立され、ILSIの一員として世界的な活動の一翼を担うとともに、日本独自の問題にも積極的に取り組んでいます。

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CHP(Center for Health Promotion)

 CHP 活動報告  
CHPの目的
ILSI Japan CHPは、日本の産・官・学界に蓄積された栄養学、公衆衛生、医学、衛生環境分野における科学的知識および技術を、国内および世界的に共通な課題の解決に活用し、社会貢献を行うことを目標としている。現在、Project PAN、Project IDEA、Project SWANの3つのプロジェクトを進行している。

これまでの主な活動
 PAN 活動報告  
Project PAN (プロジェクト パン)
     Project PANでは、科学的根拠に基づいた運動と栄養を組み合わせた2つのプログラムを開発しています。1つは、働き盛りの人々の肥満をはじめとする生活習慣病を予防するためのプログラム「LiSM10!®で、もう1つは、寝たきりを予防し、元気な高齢期を過ごすためのプログラム「TAKE10! ®です。
(プロジェクト開発・研究協力:味の素株式会社、サントリー株式会社(現サントリーホールディングス株式会社)、株式会社ニチレイフーズ、明治乳業株式会社)


TAKE 10! ® (テイクテン!®)
 "TAKE10!®"は高齢者の方々の"元気で長生き"を支援し、介護予防を目的としたプログラムです。"TAKE10!®"の大きな特徴としては、1) 運動と栄養を組み合わせて、無理せずに習慣づけることに焦点を置いていること、2) 一般的な中高年向けの生活習慣病プログラムのような"○○を食べてはいけない"等の食事制限によるアプローチではないこと、3) 科学的効果が証明されていること、が挙げられます。

 TAKE10!®の第一期介入研究は、秋田県南外村(現・大仙市)の高齢者1,418名を対象として行われ、このプログラムを導入することにより、運動習慣および食習慣の改善、筋力の維持、栄養状況の改善が認められました。この結果は、2004年11月に開催された日本公衆衛生学会で発表され、多くの注目を浴び、毎日・読売・日経3紙をはじめ、地方紙など8紙にその内容が掲載されました。これまでに、TAKE10!®に関するお申込みお問合せは1万件(そのうち自治体や介護関連団体からは200件超)、冊子は2万5,000部を発行しています。また、各地から講演依頼をいただき、これまでに、東京、神奈川、青森、山形、長野、岐阜、愛知、島根、福岡等で講演を行っています。
 介入研究の評価の詳細はこちら   

  2005年10月からは、東京都墨田区で介護予防事業一般高齢者施策として介護予防プログラム「すみだテイクテン」がスタートし、4年間で600名以上の方々が参加しています。毎年、人間総合科学大学の熊谷修先生の全体講演会を皮切りに、6地区5回ずつ計30回の講習会を開催しています。「すみだテイクテン」の介入効果は、2006年、2008年の日本公衆衛生学会で発表を行いました。また、2007年度からは、講習修了者の「継続して教室を開催して欲しい」という声に応え、月1回のフォローアップ教室も開催し、好評を得ています。
  この「すみだテイクテン」は、ILSI Japan CHPのスタッフが直接、受講者に指導を行っていますが、地方の自治体からの要請に応えるものとして、自治体の人材と住民ボランティアの活用を柱とした、もう一つのTAKE10!® モデルも開発しています。島根県津和野町では、津和野町シルバー人材センターが、平成19年度と20年度にシニアワークプログラムとして、厚生労働省から受託した「TAKE10!®プログラムを活用した介護予防リーダー養成講座」(6日間)を開講し、同センターの委託を受けてILSI Japan CHPスタッフが講師を務めました。その結果、23名の「TAKE10!®介護予防リーダー」が誕生し、行政とともに「つわのテイクテン」の実施に向けて活動を始めています。平成20年度からは、島根県益田市シルバー人材センターでも「介護予防リーダー養成講座」を開講し、21年度から「ますだテイクテン」がスタートする予定です。
  また、自治体等の指導者や介護予防活動リーダーがTAKE10!®を用いて介護予防教室をスムーズに開催できるように、指導者用マニュアル、体操指導用DVD、資料、表示サンプル、ポスター、冊子からなる指導者用マニュアルパッケージを作成しています。さらに、新たな付属教材として、2008年にはJ-milk(社団法人日本酪農乳業協会)の協力により料理レシピ集「TAKE10!®かんたんごはん」を発行し、2009 年春には、日本コカ・コーラ株式会社の製作協力により、DVD応用編を製作しました。
 「TAKE10!®」冊子のご購入方法はこちら   



LiSM10! ® (リズムテン!® )
 "LiSM10! ® "(Life Style Modification) は生活習慣病のリスクを改善するための職域保健支援プログラムです。このプログラムは、健康診断後の運動と栄養の両面からの保健指導に焦点をあてており、次の3つの柱で構成されます。1) 生活習慣病予防のための目標を自ら決定し、それを実施・記録する。2) その継続を支援するための6か月間におよぶ定期的な個別カウンセリングを行う。3) 職場や家庭において対象者を支援するためのツールを提供する。

  第一期介入研究は、2001年11月から、支援企業であるサントリー株式会社、明治乳業株式会社の5工場で40歳以上の男性を対象に実施しました。6か月間LiSM10!®を実施したところ、運動の実施と栄養の摂取に関わる行動、および肥満度、コレステロール等の生活習慣病のリスクファクターに顕著な改善をもたらすことが実証されました。この結果は、世界的に権威のある学術誌Preventive Medicine(*)に掲載されています。また、更にその効果が継続され得るか否かを検証するため、1年間の非介入期間を設け再度評価を行ったところ、その結果、運動・食行動、肥満度、LDLコレステロール等は維持・向上しましたが、総コレステロール、中性脂肪等において復帰傾向が認められ、確実な効果継続の為のフォローアッププログラムの必要性が明らかになりました。第二期介入研究は、プログラムの普及を目指し、カウンセラー養成・ツール/マニュアルの整備等を進め、2004年11月から株式会社ニチレイで実施しました。6か月の介入終了直後の評価では肥満度、HDLコレステロール等で改善が示されました。2006年11月から「保健指導プログラム」としての検討も兼ねた開始した第三期介入研究では、介入群において体重をはじめ、糖代謝関連項目など、多くのリスクファクターの改善が認められました。この結果は2007年第11回病態栄養学会、第51回糖尿病学会、2008年秋の第11回運動疫学研究会学術集会、第67回公衆衛生学会で発表されました。
  医療費削減効果については、代表的な医療経済の論文に基づいて、医療費削減効果のシミュレーションを行いました。リスク者1,000人を対象に、このプログラムを5年間実施した場合、従来の保健指導法に比べて、1億8,000万円の医療費が削減できることが推定されます。
  これまでに認められた科学的効果を、実際の働きざかりの人々に普及していくために、昨年秋から、株式会社ニチレイフーズが、保健指導プログラム「LiSM10!® 」の事業化に取り組み始めたところです。
(*)Preventive Medicine45(2007)P146-152
     
 
 IDEA 活動報告  
Project IDEA (プロジェクト アイデア)
     鉄欠乏貧血症の撲滅運動Iron Deficiency Elimination Action)は、1999年よりILSI CHP(米国アトランタ)が始めたプロジェクトです。
  多様な食物の摂取が困難な途上国では、気づかぬうちにビタミン、ミネラル類(微量栄養素)の摂取不足が起こります。鉄分は、健康に生活するために必要不可欠な栄養素ですが、欠乏すると特に子供の発育や知能の発達を妨げ、母子の健康にも深刻な悪影響を及ぼし、死亡率増加の原因ともなります。更に、この欠乏症は、成人後も労働力の低下や人材の育成を妨げるなど、社会全体の生産性の低下を招き、貧困を助長させます。2008年のWHOの報告によれば、鉄欠乏から引き起こされる貧血症は、特に対策が遅れており、今なお16億人以上の心身の健全な発達を妨げています。Project IDEAでは、それぞれの地域の食生活パターンに合わせて、市販されている主食や調味料に有効な鉄分を添加し、毎日の食事を通して欠乏栄養素を補給することにより、鉄欠乏性貧血症を予防する活動を行っています。
  中国においては、中国疾病予防センターとILSI Focal Point in Chinaの協力のもと、国策として体吸収率の高いキレート鉄(NaFeEDTA)で強化した醤油がすでに流通しています。
  ベトナムでは、ベトナム国立栄養研究所(NIN)と共同で、大規模介入研究を実施し、キレート鉄による鉄強化魚醤の貧血改善効果を実証しました。その成果が認められ、国策として鉄強化魚醤の導入が進められています。
  カンボジアではキレート鉄を用いて、カンポット市で2007年3月から鉄強化魚醤の生産を開始し、8月にシェムリアップ市およびプノンペン市でも鉄強化魚醤および醤油の生産が始まりました。2008年1月からは、現地パートナーであるNGOのRACHAと共に、シェムリアップ市で栄養調査と鉄欠乏貧血症罹患率の調査を行い、生産管理・品質保証・罹患率の評価等の分野で技術指導を行います。
  フィリピンでは、国立食品栄養研究所(FNRI)と共同で、主食であるに着目し鉄分を強化する研究を進めてきました。硫酸第一鉄あるいは微細ピロリン酸第二鉄(Sun Active)の鉄強化米において、貧血改善効果があることが実証され、一連の研究に基づく新たな技術の導入の第一歩として、2008年4月にはバタアン州オリオン市(人口5万2,000人)でマーケットトライアルを開始しました。
  2009年5月には、Micronutrient Forum(中国・北京)で、ILSI SEAとILSI Japan CHPがサテライトシンポジウム「Project IDEA」を主催し、これまでの成果と今後の計画について活発に討論を行いました。
     
 
 SWAN 活動報告  
Project SWAN (プロジェクト スワン)
     安全な水の供給と栄養・保健環境の改善Safe Water and Nutrition) WHOの報告によると、安全な飲料水の供給を受けられない人の数は、全世界で11億人に上るといいます。多くの途上国において、不衛生な水の摂取や保健衛生環境の不備は、特に子供が下痢や感染症を繰り返す要因になっています。このような状況は、食事の適切な摂取を妨げ、栄養不良の問題にもつながり、また、水処理設備はあっても、汚染物質を取り除くための適切な設備がなく、薬品の注入も管理されていないため、処理後の水でさえもWHOの基準を上回る微生物・化学物質が検出される例が多いのです。
  公共水道水の供給が今後も見込まれていないベトナム北部の農村地域に安全な水を確保するため、JICA草の根技術協力事業(草の根パートナー型))の基金を得、ベトナム国立栄養研究所(NIN)と共同で、3年間にわたり、「住民参加による安全な水の供給と栄養・保健環境の改善事業」を実施しました。
  ベトナム北部の3か所のコミューン(タンヒエップ(ハノイ)・ダイモ(ハノイ)・クワンチュン(ナンディン))をモデル地域として、約2,500世帯を対象に活動しました。安全な水を確保するために、1) 住民が水・栄養・保健衛生に関する知識を得、家庭レベルで実践し、2) 水処理施設の運転を最適化し、安全な水を供給する。という双方の視点から活動を進めました。その結果、水質が改善され、水の供給量が増加し、住民の衛生管理意識も向上しました。さらに、3) 持続的な活動のための仕組みづくりから評価に至るまでを住民の参加を得て実施し、コミュニティーベースで、継続的、かつ安全な水供給システムのモデル作りを行いました。
  2008年11月に、大きな成果を得て3年間のプロジェクトが成功裏に完了しました。報告書は外務省の支援により、「Project SWAN - Safe Water and Nutrition」として発行しました。
 報告書はこちら   
     

進捗と今後の計画
Project PAN
     介護予防プログラム 「すみだテイクテン」は、第5期(2009年)に入り、修了者対象のフォローアップ講習会(全54回)、および、新規募集者向けの(全30回)を実施しています。
  更に、今年度は他のいくつかの地方自治体で、「TAKE10!®地方普及モデル」(指導者養成型)の実施も計画しています。津和野町および隣接の益田市での行政とシルバー人材センターの取り組みも、引き続き支援していきます。また、2008年から北海道の3つの自治体(洞爺湖町、真狩村、日高町)の協力を得て、「TAKE10!®通信教育」の介入研究(北海道立札幌医科大学との共同研究)を開始しました。この結果を踏まえて、通信教育用のツール開発を行います。
  生活習慣病予防プログラムとしての保健指導プログラム「LiSM10!®」は、3回の介入研究を終え、その成果をまとめて論文として発表すると同時に、マニュアルの完成を目指します。また、株式会社ニチレイフーズにおいて事業化されました。CHPでは引き続き、その人材育成の支援を行います。
     
  Project IDEA
     カンボジアでは、カンポット市、シェムリアップ市、プノンペン市に引き続き、今後、カンボジア全土での鉄強化魚醤および醤油の普及を目指します。普及に伴って、住民への啓発活動を推進し、鉄強化魚醤および醤油の市場での品質保証システム、鉄欠乏性貧血症の改善を監視するシステムを確立します。
  フィリピンでは、開発された鉄強化米の全国展開の準備をします。その第一段階として、バタアン州全域に展開する製造・物流システムを検討しています。
  ベトナムでも、NINと共同で、鉄強化米を農村地域に導入することを検討します。そのために、農家が保存している籾殻米を使って鉄強化し、自ら消費する仕組み作りを研究しています。2009年には、鉄強化米を使った農村での鉄欠乏症改善の実証試験を開始します。
  インドでは、ILSI Indiaと共同で、主食材(小麦粉および米)の鉄強化を検討しています。まず、アタ粉(精製の浅い小麦粉:主にチャパティなどの材料となるインドの主食粉)をキレート鉄と必須アミノ酸レジンで強化する研究を行います。
     
  Project SWAN
     これまで3年間のプロジェクトの成果を継続させ、かつ、他地域にもこのモデルを拡大していくために、次の段階であるProject SWANUを検討しています。
  Project SWANで確立したモデルを全国のコミュニティーに展開するために、ベトナムの中央政府と地方行政組織を横断するワーキングチームを作り、メンバーに適切な訓練を行った後、各コミュニティーと共同で、1) 住民が正しい水、保健衛生に関する知識を得て、実践する、2) 水処理の運転が最適化され、安全な水が供給される、という状況を作り出すことが目標です。これにより、全国15か所以上(前回は3か所)のコミュニティーが自立的に安全な水供給システムと衛生環境を確立することを目指します。


* 「TAKE10!R」冊子、DVD、その他ツールのご購入方法
   書店等では販売していません。直接、ILSI Japan事務局にお申込みください。
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(2012年2月)
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